衛星の中でもよく親しまれているのがトリトンです。トリトンは海王星の衛星であり、直径2700キロメートルの大きさを持つ巨大衛星です。トリトンは準惑星クラスの天体で、もともとカイパーベルト(海王星の外側にある小天体の集まり)にあったものが、海王星の重力によって捕まえられたとされています。
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トリトンのデータ
1846年10月にイギリスのアマチュア天文愛好家のウィリアム・ラッセルによって発見されました。親惑星の海王星が発見されたちょうど1週間後のことでした。ところが2番目の衛星ネレイドが発見されるまでのほぼ100年間、名前すら付けられませんでした。
・直径約2700キロメートル(太陽系の中では7番めに大きな惑星)
・海王星からの距離:約35万キロメートル
・公転周期:5.9日
・主成分は氷
・赤道付近にメロンの皮のようなモザイク模様が見られる
・全体を、窒素が主成分の非常に薄い大気が取り巻いているとされている
トリトンの火山とクレーター
トリトンには火山があります。ただ噴き出しているのは溶岩ではなく、氷が蒸発したガスだと言われています。いわゆる氷火山なのです。探査機ボイジャー2号が撮影した画像には、トリトンの表面からなんらかの物質が局所的に噴出している様子が映し出されており、噴出物は窒素であると考えられています。また、トリトンには100個ものクレーターが見られますが、これらはトリトンの進行方向側にきれいに集中しており、海王星の軌道上にあった他の物質をかき分けて進もうとした時にできたものであると考えられています。
一風変わった星トリトン
発見当時から、トリトンは変わった様子をしていました。なんとトリトンは、親惑星である海王星の自転とは逆に公転しているのです。つまり、逆行衛星なのです。逆行惑星の中で、トリトンほど大型でかつ惑星に近い衛星は他にありません。また海王星に近いため、自転と公転が一致しています。つまり、5.9日で海王星を1周する間に、トリトン自身もぐるりと1周回っているのです。
トリトンの未来
トリトンは逆行惑星であるがため、軌道運動のエネルギーを海王星に渡してしまいます。そのため徐々に海王星へと近付いています。地球と月も、海王星とトリトンと同じく惑星と衛星の関係ですが、月は地球から少しずつ遠ざかっています。海王星とトリトンの間では、これとは逆の現象が起こっているのです。いずれトリトンは海王星に引き込まれてバラバラになり、その破片が海王星を取り巻く美しい輪になるであろうと言われています。もっともそれは今から100億年後というはるか未来の話ですが、もし見られるのならぜひとも見てみたいですね。
海の神トリトン
トリトンはギリシャ神話に出てくる海の神様の名前です。海の王ポセイドンの息子とされており(息子ではなくポセイドンの神殿にいる神という説もあり)、上半身が人間で下半身が魚という半魚人の姿をしています。ホラ貝を吹くのが仕事で、母親に似て心優しいトリトンは、荒らしで転覆しそうな船を見つけると、ホラ貝を吹いて嵐を鎮めることもあったそうです。また、得意技は変身で、美しい少年に姿を変え人間の前に現れたこともあるそうです。