冥王星は海王星のすぐ外側を回る星です。1930年に太陽系の9番目の惑星として発見され、長い間惑星として親しまれてきました。現在では、惑星ではなく準惑星というカテゴリーに分類されています。英語名は「Pluto(プルート)」。ローマ神話に出てくる暗闇の神さまの名前にちなんでいます。
冥王星のデータ
・直径:2370キロメートル
・太陽からの距離:59億1520万キロメートル
・公転周期:248年
・自転周期:約6日
冥王星の軌道は楕円形で、一部は海王星の内側まで入り込んでいます。発見当初は地球くらいの大きさがあると考えられていましたが、その後の観測で、地球の月よりも小さな天体であることが分かってきました。表面は水、メタン、窒素、一酸化炭素などの氷で覆われていると考えられています。
冥王星の世界
冥王星を含む、太陽系の遥か外側の星を観測するために、2006年1月、探査機ニューホライズンズが打ち上げられました。その後約9年半をかけて、地球からおよそ48億8000万キロメートル離れた冥王星に到達しました。ニューホライズンズから送られてきた冥王星の詳細な画像やデータは、世界中の人々に衝撃を与えました。南半球には白っぽいハート型の模様が見られ、地表には巨大なクレーターや谷、3000メートルもの山が確認されたのです。これまで冥王星は、表面温度が約マイナス230度という凍りついた世界と考えられていました。しかし、ニューホライズンズの観測によって、かなり活発に地質活動が起こっている可能性が出てきたのです。
冥王星はなぜ惑星から外されたのか?
冥王星が予想以上に小さなサイズだったこと、軌道や内部構造が他の太陽系惑星と異なる等の理由から、冥王星を惑星から外そうという議論が持ち上がり始めました。そしてついに、2006年8月の天文学会議で太陽系の惑星から外されることになったのです。しかし、発見から70年もの間、ずっと惑星と呼ばれてきた天体を、惑星から外してしまうことに抵抗感を持つ人もいました。なかなかこの議論に決着がつかなかったのは、太陽系惑星の定義がなかったためです。そこで天文学連合は3年かけて議論し、太陽系惑星の定義を決めました。冥王星はその定義に当てはまらなかったので、新しく作られた「準惑星」に分類されることになったのです。つまり準惑星とは、冥王星のために作られたカテゴリーだと言えます。冥王星は天文学の定義に大きな影響を与えた存在なのです。
未知の空間、太陽系以遠天体
海王星の先には、太陽系以遠天体をと呼ばれる無数の天体が広がっています。そこには冥王星をはじめ、冷たい氷の準惑星や小天体が広い帯状になって存在しています。冥王星は太陽系以遠天体の中でも代表的な星です。冥王星と同じ準惑星は他にもあり、ケレス(セレスとも言う)、ハウメア、マケマケ、エリスの4天体となっています。
太陽系の準惑星の条件
冥王星が属する太陽系の準惑星になるためには、次の条件を満たす必要があります。
・太陽の周りを回っていること
・十分な質量を持ち、自己重力によって静水圧平衡となって、球状の形をしている
・自分の軌道の周囲から他の天体をなくしていない
・衛星でない
準惑星に格下げされた冥王星ですが、その魅力はちっとも失われていません。冥王星にはまだまだ未知の部分が多く、天文学界の興味をそそる天体であると言えるでしょう。