タイタンは土星最大の衛星で、複雑な表面を持つ天体です。1655年にオランダの天文学者クリスティアーン・ホイエンスにより発見されましたが、数ある土星の衛星の中でもずば抜けて大きいのです。神秘に満ちたタイタンの姿に迫っていきましょう。
タイタンのデータ
・直径:5152キロメートル(水星よりも大きい。水星は直径約4800キロメートル)
・公転周期:29.5年
・表面平均温度:マイナス180度
・表面を分厚い窒素の大気で覆われている
タイタンは太陽系全体から見ても、木星の衛星のガニメデに次いで2番目に大きな天体です。
タイタンの大気
タイタンは衛星の中では唯一濃い大気を持っています。主成分は窒素です。地球より小さく重力も弱いタイタンに、どうしてこれほどの濃い大気が存在するのか、またなぜ主成分が窒素なのかはよく分かっていません。1980年にボイジャー1号がタイタンに接近したところ、オレンジ色の濃い霧に覆われて表面が全く見えませんでした。タイタンの厚い雲の下に広がる世界については、様々な予想が飛び交いました。
タイタンの表面の姿
その後の1997年にNASAのカッシーニ・ホイヘンス探査機が打ち上げられ、レーダーと赤外線装置により、濃い霧の層を通してタイタンの表面を観測することができました。探査機から送られてきたタイタンの表面には、なめらかに侵食された高地が広がり、黒っぽいホコリが作る砂に覆われた平原といった地形が見られました。また、地球の川のような地形陸地、河口、地表には液体の浸食によって角が取れ丸くなった石なども写っていました。
地球と似ているタイタン
カッシーニ探査機がとらえたタイタンの姿は、地球ととてもよく似た姿でした。大陸のある高地や盆地になった低地があること、川や何らかの液体が流れた跡など、その様子があまりにも地球と酷似していたのです。赤道付近には湖とみられる領域も見つかっています。タイタンの表面温度はマイナス180度と低音なので、液体の水は存在しません。その代わりにメタンなどの炭化水素が地球の水と同じような役割を果たしているのです。
タイタンには気候がある
謎に包まれていたタイタンの気候についても分かるようになってきました。タイタンには、地球にある水の循環サイクルと同じような、メタンの循環サイクルがありました。様々な化学物質がタイタン全体に運ばれる時に固体から液体、気体へと姿を変え、侵食作用が進むことで地形がならされたり形作られていったのです。表面にはメタンの霧雨が降っていることも確認されています。液体が表面に存在すれば、そこで生命が誕生しているかもしれないとも考えられます。ただ、低音なので化学反応のスピードが遅く、もしタイタンに生命が発生したとしても、地球のそれとは全く違ったものになると考えられます。
タイタンには四季もある
タイタンの公転周期は土星と同じ29.5年で、季節が移り変わります。タイタンの高温の領域から蒸発するメタンは風によって運ばれ、それが低音の領域で雨や雪になって降り、表面に戻されます。最初に北極地帯で湖が発見されましたが、その後にタイタンの南極は夏から秋に変わったということです。タイタンの姿は徐々にではありますが、明らかになりつつあります。