ヒペリオン(Saturn VⅡHyperion)は、土星の第7衛星です。ハイペリオンと表記されることもあります。1848年にアメリカの天文学者ウィリアム・クランチ・ボンド、ジョージ・フィリップス・ボンド、イギリスの天文学者ウィリアム・ラッセルにより発見されました。ウィリアム・クランチ・ボンドは1811年に大彗星を発見しており、ウィリアム・ラッセルは海王星の衛星トリトンも発見しています。
ヒペリオンの特徴
ヒペリオンの土星からの距離は約148万1100キロメートルで、公転周期は21.3日ですが、自転周期と自転軸は不規則に変化します。直径は最大で364キロメートルで、太陽系で2番目に大きな球体ではない天体です。表面には無数の深いクレーターが存在しており、その姿はまるでスポンジのようです。古いクレーターの底には表面よりも黒い物質が溜まっています。
ヒペリオンの変わった自転
1981年にボイジャー2号がヒペリオンを始めて間近で観測した時に、予想を覆すことが多くありました。ヒペリオンは球状ではなくいびつな形をしており、軸は土星の方向を向いていませんでした。いびつな衛星の多くは潮汐力という力が働き、いつも同じ面を母星に向けて公転しています。ヒペリオンはそれとは異なり、自転周期と公転周期が異なっていたのです。
潮汐力とヒペリオン
衛星がいびつな形になるのは、潮汐力(ちょうせきりょく)という力が働くためです。潮汐力とは母星からの引力と衛星の自転による遠心力で起きる現象です。例えば地球と月の場合、月の表側は地球に近いため、地球からの引力の影響を強く受けます。一方裏側は月の自転により強い遠心力がかかります。つまり月は両側から引っ張られることになり、歪んだ形となってしまいます。このような力を潮汐力といい、潮汐力によって引き起こされる効果を朝夕作用と呼びます。朝夕作用により月はいつも同じ面を地球に向けており、自転と公転も一致しています。つまり、地球を一周する事に月自身も一周自転します。多くの衛星には母星との間でこのような潮汐力が働くのですが、ヒペリオンは土星に向いておらず自転周期と公転周期も異なっていました。
ヒペリオンの変わった自転の理由
この風変わりなヒペリオンの自転をボイジャー2号の画像から分析したウィズダムは、すぐ内側を公転する巨大衛星タイタンの影響によって、自転が単純な回転ではなく複雑な自転運動になっていると予測しました。ヒペリオンの自転は不規則で一定の周期や軸を持たず、実質的な予測は不可能とされたのです。このことは後に科学的な裏付けが取られました。同じように複雑な自転をする衛星は、ヒペリオンの他に冥王星の衛星ニクスとヒドラがあり、海王星のネレイドにもその可能性が出てきています。
ヒペリオンの地形
ヒペリオンには現在、ボイジャー2号の写真を元に命名された地名が5つあります。
・クレーター
世界の神話の太陽神または月の神にちなんでいます。
・Bahloo(アボリジニ神話)
・ヘリオス(ギリシャ神話)
・ヤリーロ(ギリシャ神話)
・メリ(ボロロ族神話)
ヒペリオンの名前はギリシャ神話に出てくるティーターン(神々のこと)の1人であるヒュペーリオンから名付けられました。「高みを行く者」という意味で、太陽神、光明神とされています。